
性病(性感染症)についての正しい知識を! 感染経路や治療法など
性病(性感染症)は、身近な病気のひとつです。患者数は増加傾向にあり、いつ誰が感染してもおかしくないのが現状です。自覚症状があっても下半身のことはなんとなく人に相談しづらく、受診をためらってしまうことも多いかもしれません。
ですが、ほおっておくと取り返しのつかないことになったり、自分自身が感染を広げてしまう可能性も高い病気です。
ここでは、性病は性行為以外の経路でも感染するのか、どんな種類があるのかといった基本的なことから、治療法や予防法、自覚症状があった場合の相談先までご紹介しています。ぜひ、正しい知識を身につけて、予防や検査・受診のきっかけにしてくださいね。
性病とは
性行為を介して感染する病気のことを、俗に「性病」や「性感染症(STD)」といいます。たった一度の性接触でも、相手が性病に感染していれば自分に感染する可能性があります。
性病が蔓延する背景のひとつに、性病のいくつかは潜伏期間が長く、症状が出ない、もしくはごく軽度なまま進行してしまうという特徴があります。そのため、自覚症状のないまま、感染を広げてしまうのです。
性病の経路
感染源はほとんどの場合、体液中に存在しています。具体的には、精液、膣分泌液、血液などに含まれていて、これらが陰茎や膣壁、肛門や尿道、口腔内などの粘膜を介して感染します。
体液と粘膜の組み合わせから感染が起こるので、オーラルセックスのような口腔性交(口や舌で相手の性器を刺激する行為。フェラチオやクンニリングスなど)でも感染は起こります。性器の分泌液から口腔内へ感染する場合も、口腔内から性器の粘膜を介して感染する場合もあります。
日常生活で感染することはごくまれで、性行為以外では、感染者の血液が自分の傷口から体内に入るなどの特殊な感染経路があります。たとえば介護職や医療職に従事している人が傷のついた素手で感染者の血液や体液の処置や介護を行った場合、同じ注射針を使いまわした場合などです。
そのほか、妊娠中に母親から胎児へ感染する母子感染のケースもよく知られています。
5つの性病の病状と感染経路
ここでは具体的に、代表的な5つの性病についてご紹介します。
梅毒
近年、患者報告数が倍増していると報道されることの多い梅毒は、梅毒トレポネーマという病原体が原因となる性病です。
皮膚や粘膜の病原と性行為などで直接接触することによって感染し、潜伏期間は約3週間。はじめは性器や口など、感染した部位に固いしこりやただれができ、リンパ節が腫れるなどの症状が出ます。やがて、発熱やだるさなど風邪に似た症状と、皮膚に赤い湿疹が現れます。症状はでたりでなかったりを繰り返すため、治療が遅れることも多く、適切な治療を行わないと10~30年という長い年月をかけて心臓や血管、脳が侵され、精神神経異常を発症したり、死に至ることもあります。
母子感染した場合、子は先天性梅毒という多臓器感染症を発症し、死産や早産の原因になるだけでなく、新生児死亡、奇形が起こることがある恐ろしい性病です。
初期症状は軽く、風邪やアレルギー症状のひとつとして見過ごされてしまう場合も多いのですが、心当たりがあれば、抗菌剤での治療が有効ですので早期に受診しましょう。
性器クラミジア感染症
性病のうち、最もポピュラーなのが、クラミジアトラコマティスが病原体となる、性器クラジミア感染症です。潜伏期間は1~3週間程度。抗菌薬での治療が有効です。
この性感染症の特徴は、男性が感染すると排尿時の痛み、副睾丸や尿道に痛みや痒みを感じるなど半数が自覚症状があるのに対し、女性は症状が軽いか、もしくは無症状のことが多い点です。そのため、無自覚の女性が感染経路となって広がることの多い性病です。
また、男性も半数は自覚症状がなく、知らないうちに感染経路になることがあります。ほおっておくと男性の場合は尿道炎や精巣上体炎、陰嚢の腫れなどを発症し、男性不妊の原因にもなります。
女性の場合は子宮頸管炎、子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎などに進行してしまい、不妊や流産、早産などの原因になってしまいます。
性器ヘルペス
性器ヘルペスは、ヘルペスウィルスを病原体とする感染症で、口腔や性器周辺にただれや水疱、痒み、痛みなどを発症します。初めて感染したときほど症状は重く、一般的には再発するごとに症状は軽くなっていきます。
潜伏期間は2~10日。ほおっておいても自然に治りますが、ごくまれにウィルスが髄膜まで達して、髄膜炎を引き起こすこともありますので、気が付いたら受診したほうが良いでしょう。
膣トリコモナス症
原生生物の腟トリコモナス原虫が病原体となる性病が、腟トリコモナス症です。男性はほぼ無症状であることが多く、女性の場合も症状がほぼないか、あっても軽いことが多いようです。オリモノの異常や膣のかゆみなど他の病気との区別もつけづらい性病です。
感染部位はほとんどの場合女性の尿道や膣内です。膣トリコモナス症の場合、性的行為が感染経路になるだけでなく、下着やタオル、便座などを介した家庭内感染も確認されています。投薬での治療が一般的で、放置していて治るものではありません。男性の場合、感染していても「陰性」の診断が出ることがありますが、パートナーが感染していれば、感染している可能性は高いので注意が必要です。パートナーとともに治療しなければ、再発を繰り返します。
後天性免疫不全症候群(エイズ)
後天性免疫不全症候群は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を病原体とする、いわゆるエイズです。感染者は世界中で3600万人を超え、およそ1年間で180万人が新たに感染、100万人が死亡。日本でも、毎年約1500人の新規感染者が報告されています。
体液や血液との直接接触でHIVに感染し、エイズ発症までの潜伏期間は場合によっては10年にも及びます。
HIV感染後、2~3週間くらいすると風邪に似た症状が数日~10週間程度続きます。そののち数年~10年間程度無症状ですが、ほおっておくと進行し、エイズが発症します。全身性免疫不全によって日和見感染症や悪性腫瘍などをを引き起こし、死に至ることも多い感染症です。
現在では、後天性免疫不全症候群の進行を抑える新薬が次々と開発されていて、適切な治療を受ければ、決して恐ろしい病気ではありません。ですが完治はできず、薬はあくまでウィルスの抑制効果しかないため、中断すれば再びウィルスは活性化します。
性病の対処法
様々な症状を引き起こし、最悪の場合は死や不妊症、母子感染などに至る性病の予防策としては、
- 不特定多数と頻繁に性交渉を行わない
- コンドームを着用する
の2点です。
性衝動というものはなかなか抑えられるものではありませんから、セックスを控えるというのは難しいでしょう。ですが、コンドームを使用することでほぼ感染経路は遮断できます。基本的には、夫婦やカップルなどで、お互いが性病を持っていないことやお互い以外と性交渉をしていないことが確実な場合は例外として、コンドームの使用は最初からが原則。オーラルセックスの際もコンドームを着用しましょう。
性器周辺に違和感を覚え、性病かもしれないという心当たりがある場合は、できるだけ速やかに医療機関に相談しましょう。男性は泌尿器科、女性は婦人科を受診するのが一般的ですが、口腔内や皮膚などの異常の場合は、皮膚科や耳鼻咽喉科でも大丈夫です。
梅毒や後天性免疫不全症候群(エイズ)の疑いがある場合は、地域によって保健所などでも匿名・無料で検査できます。お近くの保健所に相談するか、自治体の公式サイトで情報を探してみてください。
大事なのは、感染させたかもしれない、させられたかもしれないパートナーと一緒に検査・受診をすること。極端な例ですが、浮気や風俗が原因で性病の自覚症状がある場合、パートナーが無自覚だから、パートナーに内緒で受診したい、ということもあるかもしれません。気持ちは分かります。ですが、いつかパートナーと妊活を始めた場合などに、大きなネックになりますし、何よりパートナーを大きく傷つけることになります。また、パートナーと別れた場合、パートナーが他の人に感染を広げることにもなってしまいますよ。
まとめ
性病の基本的な知識や感染経路等についてご紹介しましたが、参考になったことはありましたか?
性病には、今回ご紹介した5つ以外にも、様々なものがあります。
どの性病も基本的には、不特定多数と頻繁に性交渉を行わない、性行為の際にはコンドームを着用するなどで感染経路を遮断し、十分予防できるので過度に恐れる必要はありません。
ですが万が一感染した場合は、できる限り早めに、パートナーと一緒に治療を開始するよう心掛けてくださいね。