
男性不妊の原因と検査の種類 精液検査で何が分かるか
男性不妊の検査とは
そもそも不妊とは、一般的には避妊せずに通常の夫婦生活を送っているにもかかわらず、1年間たっても妊娠しない状態のことを言います。不妊で病院を訪れる際は、夫婦で行くのが基本です。不妊検査にあたり、男性側はどのような検査をするのが一般的なのでしょうか。
男性不妊検査とは
WHOの不妊原因調査では、不妊の原因が女性側41%、男性側24%、男女共に原因がある24%、不明11%という数値が出ています。つまり、男性に不妊要因がある率は48%です。
日本では、2003年に日本受精着床学会が不妊治療患者によるアンケート調査を行った結果、男性側に原因がある不妊が33%と出ています。
男性不妊には、主に以下のような原因があります。
- 造精機能障害(無精子症、乏精子症、精子無力症など、精子に関する障害)
- ED(勃起できない・勃起を維持できないなどの勃起障害)
- 膣内射精障害(マスターベーションでは射精できるが膣内で射精できない)
- 逆行性射精障害(精液が膀胱に逆流する障害)
- 精索静脈瘤(精巣の発育不全等が原因の精子形成障害)
- 閉塞性無精子症(精子の通り道が詰まって精子が精液に入れない)
- 先天性精管欠損(生まれつき精子の通り道がない)
- 染色体異常
- その他
たとえば、精液中に精子が見られない場合。それが単純に精子を作る能力に問題があるのか、それとも精子の通り道である精管が詰まっているのかを調べる必要があります。男性の不妊検査は、原因を特定するために必要なのです。
検査結果の基準値
男性不妊の多くは、造精機能障害、つまり精子に問題を抱えているケースです。下記の表は、WHOによる精液検査の正常値です。
検査項目 | 下限基準値 |
精液量 | 1.5ml以上 |
精子濃度 | 1500万/ml以上 |
総精子数 | 3900万/射精以上 |
全身運動率 | 32%以上 |
総運動率 | 40%以上 |
正常精子形態率(厳密な検査法で) | 4%以上 |
白血球数 | 100万/ml未満 |
クリニックによって多少の差はありますが、精液検査において上記表の下限基準値を下回った場合は別途、検査を行うことになります。
男性不妊の検査の種類
では、一般的に男性不妊の検査とはどのような種類があるのでしょうか。
精液検査
数日の禁欲のあとマスターベーションで精液を専用容器に採取します。医療機関により、病院内に用意されたプライバシーに配慮した個室での採取か、自宅での採取(採取から提出までの時間制限あり)になります。
摂取した精液の量や精子濃度、運動率や白血球数などを調べる検査です。男性にとって精液検査は抵抗があるかもしれません。ですが最も基本的な男性不妊検査であり、保険も適用されます。重度の勃起不全や射精障害などでそもそも射精ができないといった状態でない限り避けては通れない検査です。
精液検査で何らかのトラブルが見つかった場合は、別途、そのトラブルに関する検査を行うことになります。
精巣超音波検査
精子を作る精巣に問題がないかを見る検査です。精巣に腫瘍がないかどうか、精索静脈瘤ではないかなどを調べるものです。
採血
一般的な血液検査で病気がないか調べるほか、染色体異常の有無や内分泌検査、感染症関連の検査や精子に対する抗体などを調べます。精子を作るために必要なホルモンや男性機能維持のホルモンに異常がないか、などもみます。
その他
通常の問診などに加え、視診や性器への触診が行われる場合もあります。どこの医療機関もプライバシーには十分配慮しています。EDの場合は、ED治療薬の処方が一般的ですが、ED治療薬に保険は適用されません。
通常の検査で問題が見つかった場合は、更に詳しい検査と治療が開始されます。たとえば、精索静脈瘤や閉塞性無精子症が見つかった場合は手術になります。勃起障害や精液中の精子は少ないけれども精巣内から精子を採取できる場合などは、顕微授精も選択肢に入るでしょう。
検査を行う医療機関
夫婦で受診する場合は、不妊外来や不妊治療専門の医療機関で検査できます。男性単独で行く場合は、それらに加えて男性不妊外来や泌尿器科で相談できます。
検査は複数回おこなう
精液検査は、精液と精液内の精子の状態を見る検査で重要かつ基本的な検査です。
精液の量や精子の濃度、精子の運動機能などは日によってばらつきがあります。本人の体調はもちろん、検査前の禁欲期間の影響も受けやすく、かなり変化してしまうのが普通です。このばらつきを考慮し、精液検査は最低でも2回以上行うことでできるだけ正確な判断を下すのが一般的です。これは、1回目の検査がすべて正常値であっても同じです。
精液検査を2回連続で行った男性2566人の調査によると、1回目の検査で異常値が出た男性のうち2回目に正常値を出した割合は全体の23%。逆に1回目正常だった男性のうち2回目に異常値が出た割合27%だったそうです。
まとめ
男性不妊の検査についてご紹介しましたが、参考になったでしょうか。最近では晩婚化が進み、結婚前にブライダルチェックという形で男性不妊の検査を行う男性も増えているとか。
不妊というとほとんど女性側の問題だととらえる風潮が残念ながら過去にはありましたが、現在では男性不妊に対する理解も進んでいます。
検査に強い抵抗を覚える男性は多いのですが、1~2日ですむ検査です。パートナーの女性は男性以上に痛みや身体に負担のある検査を受けていることがほとんど。さらに女性の場合は検査期間も1か月はかかります。
忙しいなどの理由で検査を渋っている間に女性の年齢は上がっていき、妊娠しづらくなってゆきます。女性側からは「一緒に受診してほしい」と言いだしづらい部分もまだありますので、パートナーから不妊検査や治療の話が出たときには、是非、積極的に夫婦そろっての受診を提案してあげてください。不妊はふたりの問題です。お互いに労わり合い、協力し合うようにしましょう。