
精液検査で判明した運動率から分かることは?知っておきたい男性不妊の種類と正常値
不妊の原因は、女性側だけにあるとは限りません。男性不妊を発見するためには、まず精液検査を受けることが第一歩です。
精子の運動率などの数値を、詳しく知ることができる精液検査。その数値よっては、男性不妊の可能性もある程度予測できるでしょう。
そこで今回は、男性不妊にはどのような種類があるのか、そして検査で示される数値はどのように判断すればいいのかをお伝えします!
男性不妊の種類
一口に男性不妊と言っても、その症状や状況はさまざま。ここでは、男性不妊の主な原因を紹介していきます。
乏精子症・運動無力症
精液1mlあたりの精子数は1500万以上、運動率は40%以上が基準とされています。この基準と比較し、精子の数が少ない場合は乏精子症、精子の運動性が良くない場合は運動無力症と診断されることがあります。
これらの症状にはさまざまな原因が考えられ、はっきりとした理由が明らかにならないケースも珍しくありません。原因が特定できない人に対しては、ビタミン剤や漢方剤が処方されることもあります。
また、血液検査でLH、FSH値をチェックし、結果次第でホルモン療法が提案される人もいます。この治療では、効果が出るまで最低3か月は必要となるでしょう。
無精子症
精液検査の結果、精液中に精子が1匹も存在していない場合は無精子症と判断されます。無精子症でも射精や精液の排出が可能のため、検査をして初めて精子がいないと知るケースがほとんどでしょう。
無精子症には、精子の通過路が閉鎖している「閉塞性無精子症」と、精巣の精子を作る力が低下している「非閉塞性無精子症」の2種類があります。
「閉塞性無精子症」の場合、たとえ精液中に精子がいなくても、精巣内では精子が作られています。そのため、手術によって精子の通過路を開通させる、もしくは精巣から採取した精子を顕微授精させる手段があります。
一方、「非閉塞性無精子症」は以前まで「精子が作られておらず、子どもを望むなら非配偶者間精子提供(AID)しかない」と言われていました。しかし、最近では精巣の中でわずかに精子を作っており、その精子を見つけ出せるケースも明らかになっています。
治療法としては、顕微鏡で精巣内の精子を見つけ出す、顕微鏡下精巣内精子採取術(Microdissection TESE)が挙げられるでしょう。非閉塞性無精子症の場合でも、この手術で30-40%の方の精子が発見されています。
精索静脈瘤
男性不妊症の原因として代表的なものが、この「精索静脈瘤」。陰嚢の静脈が拡張している状態のことです。
陰嚢内にある約10本の静脈は心臓へ流れていき、合流した後お腹にある太い静脈に入ります。ところが、精索静脈瘤の場合、血行不良の影響で血液がうっ滞して精巣が温められてしまいます。
通常の陰嚢内は体内より3度ほど低い温度となっており、その温度で精子が作り出されています。反対に、精巣が温かい状態では精子を作りだしにくく、精子形成障害が発生しやすい状況に。精索静脈瘤の全員の精液所見が悪いとは限りませんが、検査結果次第では治療対象になるケースもあります。
治療法としては、顕微鏡を使った手術で静脈を結紮する方法が挙げられます。なお、この治療効果(精液所見改善率)は6-7割ほどです。
精子の3つの指標
精液検査を行うと、精子量や精子数、運動率といった指数が示されます。それぞれの数値が、どのようなことを意味しているのかを学んでおきましょう。
精液量
膣内はヒダ構造になっているため、表面積は意外と大きいということをご存じでしょうか。精液は液体のため、この表面積の大きい膣内に広がっていきます。
射精したすべての精液のうちの一部は、このような段階でロスに繋がってしまうのです。これを踏まえると、精液量は多いほうが望ましいと言えるでしょう。
精子数
膣内に射精された精子が受精するまでは、さまざまなハードルが待ち受けています。酸性である膣内は、精子にとって負担のある環境。そんな状況の中で6~10cmある膣内を移動しなければならず、子宮口までたどり着けない精子もたくさん存在します。
さらに、子宮頸管を経て、子宮から卵管へうまく移動しなければなりません。このようなハードルをすべてクリアできる精子は、数十万~百万分の1ほど。ゴールまでたどり着ける精子を多くするためにも、精子量はできるだけ多いほうが有利でしょう。
運動率
精子の中には、しっかり直進するものもあれば、蛇行や回転を繰り返すものも存在します。子宮や卵管内の壁に当たりながら進んでいく精子は、移動距離のロスが少なく、卵子にたどり着く可能性が高いと言えるでしょう。
精液検査の正常値
精液検査の結果が出たら、正常値と照らし合わせて判断していきます。WHOマニュアル2010は「正常下限値」を設けており、それぞれの値は精液量1.5 ml、総精子数3900万、総運動率(前進+非前進)40%、前進運動率32%となっています。また、精子濃度は1500万/ml、 正常形態率は4%とも定められています。
精液検査の結果、この正常下限値をクリアしている男性は約8割とされており、これに満たない方は自然妊娠の期待が薄いといえるでしょう。さらに、35歳以上の男性は下限値以上でも精子の質の低下が懸念されます。その場合、受精能力や
まとめ
射精ができているからといって、精子の状態に問題がないとは言い切れません。精液検査では精子の状態を詳しく知ることができるため、まずは検査を受けて今の状況を把握しておきましょう。
精子数や運動率など数値化されたデータがあれば、基準値と照らし合わせて不妊の原因を発見できる可能性もあります。状況に適した治療法を提案されるケースもあるため、ぜひ精液検査を受けてみましょう。